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更新日: 2023/08/23

情報開示が求められる19項目の人的資本について解説

日本における人的資本開示の動きとして、まずは有価証券報告書(有報)を発行する大手企業4,000社が2023年3月期より、有報に人的資本の情報を記載することが義務化されました。人的資本経営にまつわる開示項目について解説していきます。

参照元:金融庁(https://www.fsa.go.jp/policy/kaiji/sustainability-kaiji.html

INDEX

人的資本可視化指針で示された19の開示項目

内閣官房が公表した「人的資本可視化指針」には、人的資本における望ましい開示項目として、下記の7分野19項目が掲げられています。

  1. 人材育成:リーダーシップ/育成/スキル・経験
  2. 多様性:ダイバーシティ/非差別/育児休業
  3. 健康・安全:精神的健康/身体的健康/安全
  4. 労働慣行:労働慣行/児童労働・強制労働/賃金の公正性/福利厚生/組合との関係
  5. エンゲージメント:従業員満足度
  6. 流動性:採用/維持/サクセッション
  7. コンプライアンス:法令遵守

それぞれの分野について、具体的な内容を見ていきましょう。

1.人材育成

この分野では、従業員1人あたりの研修時間、研修費などの開示が求められると想定されます。後継者の育成や個人のスキルアップへの取り組み、優れた人材を自社で維持するためのシステムなどの情報も含まれます。

2.多様性

性別や人種、国籍にとらわれず、多様性のある人勢を受け入れる体制が整っているかどうか、属性別の従業員比率、男女間賃金格差、育児休業の取得率、育児休業後の復職率などの情報開示が求められます。

3.健康・安全

労働災害発生件数、安全衛生研修受講率、従業員の欠勤率などのリスクマネジメントの観点から、従業員は安全に仕事ができるか、心身の健康が保たれているか、などの情報開示が求められます。

4.労働慣行

労働慣行の項目には、賃金が適正か、不正な労働は行われていないか、差別・ハラスメント件数、団体労働協約対象の従業員比率、福利厚生の種類・内容など、企業の社会的信用に関するものが挙げられます。

5.エンゲージメント

自社の従業員が、その労働環境や業務内容に満足しているか、やりがいを感じられているかなどの度合いの開示が必要とされます。ストレスや不満などの度合いについては、ストレスチェックなどで数値化することができます。

6.流動性

流動性の分野では、人材の定着や維持に関する取り組み、離職率、採用コスト、後継者準備率などの項目が対象になります。

7.コンプライアンス

コンプライアンスの分野では、社会的な規範や倫理に基づき、企業活動が行われているかを示します。法律を守って企業活動を行っているか、倫理的な行動を取っているか、などの情報のほか、懲戒処分件数などの情報開示が求められます。

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情報開示における留意点

情報開示を行うにあたり、内閣官房の「人的資本可視化指針」では、2つの留意点を上げています。

  • 他社の事例や特定の開示基準に沿った横並び・定型的な開示に陥ることなく、自社の人的資本への投資、人材戦略の実践・モニタリングにおいて重要な独自性のある開示事項と、投資家が企業間比較をするために用いる開示事項の適切な組み合わせ、バランスの確保をすること(「独自性」と「比較可能性」のバランス)。
  • 開示事項には、「企業価値向上に向けた戦略的な取組」に関する開示と、投資家のリスクアセスメントニーズに応える「企業価値を毀損するリスク」に関する開示の大きく2つの観点があることを意識し、説明方法を整理すること(「価値向上」と「リスクマネジメント」の観点)。

引用元:内閣官房「人的資本可視化指針」_PDF(https://www.cas.go.jp/jp/houdou/pdf/20220830shiryou1.pdf)

まとめ:情報開示だけを意識した施策にならないことが重要

人的資本の情報開示項目について解説しました。人的資本経営を進めるにあたって気を付けたいのは、人的資本開示が義務化されたからといって、情報開示に焦点を当てた施策にならないようにすることです。

人的資本の情報開示は、あくまでも、株主など一部のステークホルダーに対するものであり、人的資本経営のすべてではありません。企業のリスクマネジメントや働き方改革などの保守的な部分だけでなく、独自の戦略など、企業の成長に部分も見せて、優位性を出すことも必要です。