従業員の持つスキルを資本と捉え、そこに投資することで企業の生産性や価値の向上を目指す人的資本経営。ここでは、人的資本経営を行うにあたって、知っておきたい具体的な取り組みとポイントについてまとめています。
人的資本経営とは、従業員の持つ能力や知識、経験、スキルを資本と捉え、そこに投資をすることで、中長期的に企業の生産性や価値の向上を目指していくという経営のあり方です。
2020年9月、経済産業省は、同年1月に開催された「持続的な企業価値の向上と人的資本に関する研究会」の報告書であり、変革の方向性や人材戦略についてまとめた「人材版伊藤レポート」を発表。これにより、人的資本経営が注目されるようになったといわれています。
さらに、2022年5月に、経営戦略と連動した人材戦略の実践の仕方についてさらに深掘りし、高度にした「人材版伊藤レポート2.0」を発表。中でも、「3つの視点」「5つの共通要素」に基づいて人的資本経営で具体化させようとする際、実行すべき取り組みや取り組みを進めるためのポイントなどが示されています。
2022年8月には、人的資本可視化指針として「企業の人的資本の開示に関する指針」が公表され、人的資本の情報開示のガイドラインとなっています。
人的資本経営を実践する前に、どのような人材が自社にとって、ハイパフォーマー(高い成果や業績を上げる)人材といえるのかを明確に言語化できていることが重要です。そこで、当メディアでは、ハイパフォーマー人材を軸に、新たなハイパフォーマー人材を育成し、真の人的資本経営を実践していくための3ステップを解説します。
人材版伊藤レポートでは、人材戦略には3つの視点と5つの共通要素が求められるとしています。
3つの視点として「経営戦略と人材戦略の連動」「As is-To beギャップの定量把握」「企業文化への定着」、5つの共通要素として「動的な人材ポートフォリオ」「知・経験のD&I」「リスキル・学び直し」「従業員エンゲージメント」「時間や場所にとらわれない働き方」が挙げられています。
人的資本経営を実施する企業は、こうした共通要素に加え、自社の経営戦略上重要となる人材アジェンダについても、経営戦略とのつながりを意識しつつ、具体的な戦略やアクションを検討することが有効だとしています。
人的資本経営を実施するにあたって、他者がやっているからと真似したり、ガイドラインや指針の準拠を重視し、自社では経営判断に用いていない、重要視していないKPIを設定するという課題に陥りがちだといわれています。
まずは、自社がどうありたいのかを明確にして、「なぜ取り組むのか」「何が重要か」「具体的にどのようにアクションしていくか」を考えていきましょう。
人的資本経営を進めていくうちに、経営戦略と人材戦略がかけ離れたものになってしまうこともあります。その場合、何のための人材戦略なのか、経営戦略と紐づけて見直し、目標とする未来像を実現するためのルートを、未来から現在にさかのぼって考えていくことが大切です。
人的資本経営において、人的資本の情報開示が求められるようになり、もっとも危惧されるのが、情報開示を目的にしてしまうことです。開示を目的にしてしまうと、データの集計だけで終わってしまうことがあります。情報開示は何のために行うのかを考え、人的資本経営が企業の生産性や価値を向上させるために行うのだということを念頭に、取り組むようにしましょう。